柔らかな頬

柔らかな頬
柔らかな頬
桐野 夏生

この小説のジャンルはいったい何なんだろう。

行方不明になった子どもを追い求める母親と
余命残りわずかな元刑事。

読者には三つのパターンの真相を提示するが
どれもが真実のように語られる。
しかし結局、事実は・・・。
残されたのは絶望だけなのだろうか。

人生ってそんなものなのよと
ハンマーで頭を打ち砕き、終わらせるような人だ、
この作家は。
その潔さと冷徹な物語と文体に痺れた。

誰かに見られている

誰かに見られている(字幕スーパー版)

十数年前の年末、僕はちょっとした病気で入院していた。
その時の、夜中にTVで放映されてた映画が忘れられなかった。
もう一度観たかったのだが、タイトルも何もわからず、
そのことを、HPの掲示板に書いたら、
親切にもある方が、探して来てくれた。

リドリースコット監督
トム・ベレンジャー/ミミ・ロジャース主演
「誰かに見られている」

で、最近やっと借りて観た。

内容を簡単に言えば、
殺人現場を目撃した大富豪の女性ミミと、
そのミミを護衛する妻子持ちの刑事トムが
恋に落ちてしてしまうと言う話。

途中で不倫が奥さんにばれてしまうのだが
泣いてあやまるトムは、なんとも情けなく、
おまけにパンチをくらい、鼻血まで出す。
やけになったトムは同僚が護衛している時に
堂々とミミの家に入り込んでセックスをする。
その余韻に浸っている間に
忍び込んできた犯人の手下に同僚が殺されかかる。
トムは、その手下を射殺する。刑事らしい場面はこのシーンだけ。
しかしそのために、仕事からおろされることになり、
奥さんとも完全に別居状態になる。
最後は、犯人に奥さんと子どもが殺されそうになり
トムは不倫相手と現場へ行くのだが、なんと奥さんが犯人を射殺する。
そしてトムは奥さんに抱きつき、「もう一度やりなおそう」と言う。
それを見たミミは去っていく。

最後の最後まで情けない中年刑事を演じるトムに共感を覚えた。
ビデオ屋さんでは、いちおう「サスペンス」に分類されていたのだが
これは「不倫もの」だ。
嫁さんと一緒に観たので、ちょっと落ち着かなく
一人で観ればよかったと後悔していた。

後日、嫁さんに感想を聞いてみた。
「男の人がかわいそうやったわ。
なんか奥さんに押さえつけられてるから、
不倫相手とうまくいけばなぁと思ってた。」だと。

朝まだき

朝まだき

明けゆく白空に
ゆっくりと息を吐く

何かをどうかしたいわけじゃなく

どうもしなくていいよと、
つぶやいてみる

満ちるものがあるとき
その波頭に立ち上がり
雲に手をのばしてみる

沈むときには
捨てられた子どものように
体をまるめて海底を漂う

愛しくて仕方ないときは
強く抱きしめて
こぼれる香りに埋もれる

悲しいときは
原生林に吹く風のような
誰かの歌声に身を委ねる

ただ、昨日は過ぎ
また今日が始まる
見え始めた太陽は加速をつけ
そして、カンバスの下地は乾かないまま 

OLDBOY

オールド・ボーイ プレミアム・エディション

原作も、レビューもまったく見ないままこの映画(DVD)を観た。

酔っ払いが警察で保護されている場面から始まる。
腹の出た中年のオ・デスが散々悪態をつくシーンが淡々と流れる。
迎えにきた友人が公衆電話で家庭に電話している間に
娘へのプレゼントだけ路上に落としたまま、彼は消え去る。
15年間の監禁の始まりだったのだ。

細部にはつっこみどころはあるし
見てられないほどのグロな部分もあるが
そんなことはふっとんでしまうほど
あれよあれよと言うまに映画に惹き付けれていった。

オ・デス役のチェ・ミンシクはアホな酔っ払いから
自らの●●を切り落としてしまう鬼気迫る役まで
見事に演じきっている。
カン・ヘジョンとのセックスのシーンはリアリティを感じて
胸が痛くなった。
しかし、彼女が一緒に家族の捜索を始めた時に感じた
ある事が、最後には本当になったのは、ショックだった。
おそらく、このことが原作にはなかったことなんだろうけど。

確かにグロ過ぎるけれど、それと同じくらい哀愁を感じた。
それはたぶん、同じくらいの娘がいるからだろうか。

ふたつの不道徳が、心をざわつかせる。
忌み嫌うべきものであるはずなんだけど。