Sidewalk Talk/本多孝好

I love you
I love you

飢えていた、彼の作品に。
「I love you」と言う短編集の中に収められていた。
「真夜中の五分前five minutes tomorrow」以来だ。

なんなんだろうこの感触。
桐野夏生の作品は、彼女の世界の中に引き摺りこまれながらも
裏切られるような爽快感があるけれども
本多の作品は、僕の中から湧き出てくるものとシンクロして心を揺さぶられる。
もしかしたら、この作品は僕が書いたんじゃないかと思えるほど。
いや、当然僕などに小説なんか書けるはずはないけれど。
心のデジャブゥなんだ、きっと。

今回の作品も劇的な内容ではなく、離婚を目前に控えた夫婦が
レストランで最後の食事をしながら、昔を振り返ると言う話だ。
淡々と思い出される過去の思い出話に、ああそんなことがあったと
まるで自分のことのように懐かしんでしまう。
作品の世界と僕の世界が交錯してしまい
いつしか僕はレストランに降り立ち、彼女と別れたくない
なんて思ってしまうのだ。

そして最後のチェックの時、彼女が側を通り過ぎた瞬間に
湧き起こる激情と思い出されたある話。
フラッシュバックのように、シーツの中から見上げる彼女が
そしてその言葉が頭の中を駆け巡る。

この後、僕らは、いや、彼らはsidewalkで何を語るんだろう。