足下の宇宙

二人は泣いていた
とりあえず乾杯しようと
ビールのジョッキをあわせた
そして抱き合った
キスもした
こんなこと、初めてだなって思った

実家の通り庭に立っているはずなのに
二人の足元には、見てはならないような
深い深い闇なのか宇宙なのか
そんなものが広がっていた

母は一瞬だけ見て目をそらし
ああ、こわいと呟いた
僕は悲しいけれど嬉しかった
だって亡くなっても意識があるんだって
分かったから

そこで目が覚めた
上を向いて寝ていたせいか
目の上に涙が溜まっていた
朝かなと思ったらまだ一時半
なんだか吐きそうな気分
お腹もぐるぐるいってる

そういえば今日の仕事の帰り地下鉄で
エスカレーターに向かって歩いていると
人の流れとはあきらかに反対の方向から歩いてくる男と目があった
まさかエレベーターを逆方向に降りてきたのか
訝しながらすれ違ったことを
何故かいま思い出した

ああ眠れなくなった

そう、乾杯の前のシーンは
母が父の肩を片手で叩きながら
何か歌っている
二人は半透明だった
僕も一緒に歌っていたけど
どんな歌なのか思い出せない