隔離の記憶

いろんなことを知ろうとすればするほど知らないことが増えていく。この夏、やっと僕は「ハンセン病」にたどり着いた。それまではおぼろげに知っていたのだが、それは知ったつもりになっていただけのことであったのが分かった。ナチスのユダヤ人に対するホロコーストに匹敵するほどのことが、この日本で行われていたなんて。

講演で支援センターの方が「ハンセン病で隔離された方々のお話しは千差万別です。ひとりひとり聞き取っていってください」というようなことをおっしゃっていたが、実にそのとおりだ。この本にも多くの隔離された方々が証言されていて、さまざまな人生を送ってこられているのが分かる。

僕は「沢知恵」さんのCDを何枚か持っていた。その中で「かかわらなければ」という半分ほど朗読のCDがあった。塔和子さんの詩だったのだが、その方がハンセン病であったのを、この本で初めて知った。僕の中でつながったのだ。塔和子さんも沢知恵さんもこの本の中に出ていらっしゃる。

また、映画「あん」(ドリアン助川原作)の主人公のモデルになった方も、この本の最初に出てこられる。なんとご主人さんはハンセン病の誤診で隔離されたそうだ。上野さんと結婚したので、ご主人が断種したそうだ。奥さんに不妊手術をさせるのは忍びないので、奥さんに黙って断種の手術を受けたのだ。奥さんはふんどしが血で真っ赤になっているので、それで初めて気がついたとか。ふんどしが真っ赤になるほどの手術って、もしかして睾丸をまるごと切り取られたのだろうか。

著者の高木智子さんのお陰で、隔離されていた方の怒りや悲しみ、そして喜びまで少し身近に感じることができた。多くの方に読まれるべき本だなと思う。