誰が飲ませた?

病院で待合室にいると、ひとりのおじいちゃんが入ってきた。
足取りもちょっと不安定な人だった。
僕はしんどかったので、壁に持たれながら目をつむっていたが
気配を感じたので、うっすら目をあけるとその人の手元が目に入った。
財布のチャックをしめるのに手間取っている。手先が震えている。
視線も感じたので、顔を見ると僕と一瞬目があった。
手助けを求めているのかと思っていると、視線がそれた。
よくみると、絶えず顔が動いていた。
正面を見たり、下を向いたたり、目をぎゅっと閉じたり開けたり、顎を突き出すように口を閉じたり、笑うように頬が引きつったり、舌がでたりひっこんだり、一連の動きがループして止まっていない。

看護婦さんに名前を呼ばれたら、かなり大きな声で、発作のように
「はい!はい!」と返事している。
中待合室に入ったけど、中から声が聞こえてくる。
「●●さん、ひさしぶりやね。今日はどないしはったん?」
「はい!はい!夜ねられへんから、薬ほしい」
「●●さん、長谷川さんとこ行ってはるやろ?そこでお薬出ないのん?」
「夜寝られへんから薬ほしい」
「どんな薬もろてるか、わかる?今日、薬の袋とか持ってはる?」
「もってへん」
このあとは、どうなったのか分からない。
長谷川という病院に問い合わせたんやろうか?

この話を知人にすると、その症状は「ジスキネジア」ではないかという。
抗精神病薬の副作用であらわれる症状らしい。

なんか悲しくなった。
このお年寄りはどんな方なのかはまったく知らないけれど
長年生きてきて、晩年にこのようなことになっていても
病院に付き添う人がいない。
そのうえ、このような症状が出るまで
放ったらかしにしている医者も、なんや?
知識ある人がちょっと聞くだけで、副作用って推測できるほどの状態。
なんでこうなるまで、薬を飲ませたんや。
ほんまハラもたつ。