セーラー服の歌人 鳥居

やっと図書館で順番が回ってきた。持ち帰って一気に読んでしまった。

「セーラー服の」って枕詞みたいについているから、ミーハー的な色もんのようなイメージを受けるが、そうではない。彼女の願いがこもった服装なのだ。彼女は小学校3年生までしかまともに学校へ行っていないが、学び直すには、夜間中学校からしかやり直せない。それでも小学校で習う半分は学べなく、たとえば分数や割り算さえも基本的なことが分からなかったらしい。だから、自分のような学びたくても学べない人がひとりでも少なくなって欲しいという願いが、セーラー服に結びついているらしい。とても真摯な「セーラー服」なのだ。

しかし、歌集「キリンの子」を読んだ時に、壮絶な人生を送ってきたことはよく分かっていたのだが、今回、この本を読むことによって、さらに、彼女の悲惨な人生をはっきりと時系列を追って認識することができた。

もし彼女が実名で書き、入所していた施設とかも名前が特定されてしまえば、これは事件として世間を騒がすことになるくらい、ひどい扱いを受けてきている。そしていまも、解離性・複雑性PTSDと診断されていて、起き上がることさえもできない日が多くあるらしい。

彼女は短歌と出会って、生きる希望を見つけ出した。そして、世に蔓延と存在する自殺予備軍の人たちに、自分の言葉を届けて、共に生きていきたいと彼女は言う。だから、彼女のことば(短歌)には魂、言霊がこもっている。

言葉だけで、人を勇気づけるのはとてもむずかしいと思う。でも、それが、今も彼女が生きている理由なんだと思う。

http://amwbooks.asciimw.jp/trial/978-4-04-865632-0/?page=1

The Revenant

すごい映画を観た。

今までに観たことがないようなカメラワークだった。
3Dでもないのに、どこから矢が飛んで来るかわからない場面もあって、ドキドキした。ストーリーとしては単純な内容だけど、あまりにも壮絶すぎる。クマに襲われて死にかけても、復讐のために蘇ったというアメリカでは伝記上の人物らしい。

しかし。一緒に観た連れ合いは、「内容がないやん」って、あっさり切り捨てる。

音楽もまた素晴らしい。エンドロールで音楽をしっかり聴こうとしたなんて、これもまた初めて。音楽の中に吸い込まれていくような感じになる。

しかし。連れ合いは、「むっちゃ暗いやん、気分が落ち込むわ」と切り捨てた。

ま、ええけど。

昔からディカプリオは他人のように思えない。自分をみているようだと感じるのだ。むかし、どこかで兄弟だったのかもしれない。

なんて言うたら、どないなるか分かっているので、誰にも言わないことにしている…。

「もう一つの学校」

劇作家であり美学者でもある山崎正和が敗戦後の満州で受けた教育のことである。
外は零下二十度という極寒のなか、倉庫を改造した中学校舎は窓ガラスもなく、寄せ集めの机と椅子しかない。引き揚げが進み、生徒数も日に日に減るなかで、教員免許ももたない技術者や、ときには大学教授が、毎日、マルティン・ルターの伝説を読み聞かせたり、中国語の詩を教えたり、小学唱歌しか知らない少年たちに古びた手回し蓄音機でラヴェルの「水の戯れ」やドヴォルザークの「新世界」のレコードを聴かせた。
そこには「ほとんど死にもの狂いの動機が秘められていた。なにかを教えなければ、目の前の少年たちは人間の尊厳を失うだろうし、文化としての日本人の系譜が息絶えるだろう。そう思ったおとなたちは、ただ自分一人の権威において、知る限りのすべてを語り継がないではいられなかった。

(「もう一つの学校」、山崎正和『文明の構図』所収)