かぞくのくに

静かな映画だった。その静けさの中に、さまざまな感情が塗り込められていたように感じる。しかしその感情の振幅に振り回されるほど、僕はその背景や歴史をきちんと把握できてはいない。

だから中途半端にしか勉強してこなかった僕にとっては、もやもやとしたものが残っている。もっと知らなければと、そういう思いが先に立つ。

彼の国の批判はいくらでも出来るが、「地上の楽園」を目指さざるを得なかった日本の社会というものが、どうであったのか。映画ではまったく語られていないだけに、逆に胸が塞がる思いだ。

彼の国へ急に帰国せざるを得なくなった時に妹を慰める言葉に、「思考停止は楽なんだ」と言いながらも妹には「お前はいっぱいいっぱい考えて、いろんな所に行くんだ」という台詞があった。

私たち日本人の大半は、今や自発的に思考停止してしまっている状態だ。とりあえず今の生活さえオモシロ楽しく生きていけりゃいいと。そう、此処こそがまるで地上の楽園であるかのように。

そんな様々なことを考えさせられてしまう良質の映画だったと思う。