エルネスト もう一人のゲバラ

 

 我が同郷堺の映画監督阪本順治が何度もキューバに赴き、取材を重ね完成させた作品だ。今のメジャーな映画界では取り扱われにくい素材であるが、監督をはじめ出演者やプロデューサーたちがゲバラファンであることから奇跡的に映画化することが出来たと監督が仰っていた。

 映画の中のエピソード、例えば、カストロが夜中に医学生たちを訪ねて不満はないかと尋ねたら、学生たちは便所が汚いとか飯が悪いとか答えて、その後バスケットボールを一緒にして帰った話とか、友人が孕ませた女性とその子供の面倒をフレディがみた話とか、これらは取材から得た本当の話であるそうだ。

 ゲバラやフレディに最高の敬意を払いながら脚本を書いたためか、その心労で監督は現地でご飯が喉を通らなくなったらしい。それを案じた滞在先のメイドさんが、自分の昼食のサンドイッチを、わざわざ一口かじって「食べて」と分け与えてくれたそうだ。あまり裕福でないので質素なサンドイッチだったけれど、それでも困った人がいたら分け与えるというキューバ人の優しさに触れたと仰っていた。

 映画の中でゲバラたちが広島に行くシーンがあるが、実はその直前までゲバラたちは堺の石津にいたらしい。石津にある久保田鉄工で耕運機に試乗していた。キューバの資料館でそんな写真も監督は見てきた。そして監督が言うには、

「そんなことを知っていれば僕は石津に行ったんですけどね、まだ一歳でしたけど」

 オダギリジョーが司会者から「ゲバラやフレディのような命を懸けて国を守るというのはどう思うか?」と聞かれた時に「今の日本は守るべきものなのかどうかわからですけど、僕の場合は命を賭けるなら映画でその使命を果たしたい」というような趣旨のことを言っていた。

 監督も言っていたが、派手な戦闘シーンなどは少ない。フレディが祖国ボリビアの解放戦線に参加するまでに至った経緯を懇切丁寧に描いているからだ。フレディの最期もあっけない。でも、それがリアルなんだと思った。