冬の兵士~本物のテロリストは私だった~

「私たちはテロリストと戦っていると教えられました。ところが本物のテロリストは私だった。そして本当のテロリズムはこの占領だ。」 マイケル・プライズナーの証言(p135)より

冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実

この本は、イラク・アフガニスタンに関わった兵士やその親、そしてイラクの民間人などが戦場の実態を告発した証言をまとめたものだ。兵士たちは自分たちが行った残虐な行為を具体的に証言し、イラクやアフガンニスタンの人たちへの謝罪とともに、アメリカ政府を、戦争を、告発している。

軍事史家S.L.A.マーシャル陸軍准将が、第二次世界大戦の帰還兵を調査したところ、戦場で実際に発砲した兵士は15~20パーセントだったということがわかり、そこで訓練方法が見直された。そして人を殺すことにためらいがなくなるような非人間化の教育がなされた結果、ベトナム戦争では90パーセントの兵士が発砲するようになったという調査結果がある。

非人間化された心は、人格を崩壊させ、短絡的で差別的な人間となっていく。そして、軍隊内部の人種差別主義は、他国の破壊と占領を正当化するための重要な手段として利用されてきたという。本書では、軍隊内での強姦行為も告発されている。上層部に訴えてもそれが取り上げられることもなく、逆にそれが表沙汰にならぬよう、色んな部署をたらいまわしにされ、やがては逆に監獄に送られそうになる結末を迎えるという、なんとも低俗で悪意に満ちたな組織構造なんだろう。

米軍では毎日18人の帰還兵が自殺をし、毎月1000人が自殺を試みているらしい。戦闘で戦死する兵士よりも自殺する帰還兵のほうが多いのだ。退役軍人医療制度がありPTSDの治療もあるのだが、予約さえなかなかとれない状態で、やっと診察にありつけても15分ほどで終わり、薬を処方されるだけのようである。米国政府には退役軍人にまで回すお金がないのが実態だろう。

いや、戦場でも兵器さえ配給がないこともあったと証言されている。隣の部隊に弾薬を借りにいったり、車にも装甲がなされていなく、古いトラックに鉄板を貼ったら、それが重過ぎて時速20~30kmしか出なかったとか。笑い話にもならない。もうアメリカも末期ではないか。だから新たに兵士が集まることもなく人手不足で、PTSDのまま戦場に呼び戻されたり、あるいは帰還を契約無視で延期されたりするので、さらに兵士たちは疲れきっていく。

志願兵となる人たちは、愛国心というのが一番の大義名分だろうが、実際には、支給されるお金に惹かれてのことだろう。大学への学費が免除になるらしい。だから、志願兵たちは、貧困な環境で育った人が多いようである。しかし、怪我やPTSDで除籍されてしまった人たちには支給されないことがあるらしく、またそんな状態では仕事にも就くことができないため、ホームレスとなったり、やがて自殺してしまうのだという。

この本を読んで、アメリカ政府は様々な面で末期を迎えているような印象を持った。だからこそ、この「冬の兵士」たちは立ち上がったんだと思う。

今朝(10/3)の読売TV「ウェークアップ!ぷらす」で森本敏が「中国が軍事費を増額しているので日本も増額すべきだ。」のようなことを言っていたが、いざ戦争をしてしまえば、世界一の軍事費を誇るアメリカでさえこのような結末になるのであるから、軍事にお金をつっこむことはいかに無駄であるかと、僕は思うのだが。