証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか

証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書)
証言 沖縄「集団自決」―慶良間諸島で何が起きたか (岩波新書)
謝花 直美

現在高校1年の娘が、中学の時に使っていた教科書「新編新しい社会・歴史(東京書籍)」のP195には「1945年3月、アメリカ軍は沖縄に上陸し、激しい戦闘が行われました。沖縄の人々は、子どもや学生をふくめて、多くの犠牲者を出しました。」と、沖縄戦については、たったこれだけしか書かれていない。

先日、「沖縄戦・ある母の記録」を読んだあと、「集団自決の真実~日本軍の住民自決命令はなかった!(曽野綾子)」と「証言・沖縄集団自決(謝花直美)」の二冊を読んだ。この二冊は全く正反対の内容の本だ。

曽野綾子氏は、慶良間に駐屯した「海上挺進第三戦隊」に所属した元兵隊たちからの証言を元に書いた本であるらしい。それによると、特攻隊として慶良間に来たので、特攻船以外の武器などは持っていなく、島の人たちを守るなどという意識はなく、自分たちのことで精一杯だったと。だから、島民を集めて自決の指示など出す余裕もなかった。軍規に則って、スパイ容疑で住民を殺害したことはあるが、自決のために島民たちが持っていた手榴弾は、地元で召集された防衛隊員が勝手に配ったもので関知していない、と言うような中身だ。小説家であるからか、情景の描写などが少しくどく鼻についた。

曽野綾子氏に関しては、かなり昔に「太郎物語」を読んだことがあるくらいで、名前はよく知ってるがどんな人物なのか知らなかった。だからこんな本を書いているとは驚きで、曽野綾子のことを少しネットで調べてみた。すると、かなり悪評高き人物であることがわかった。一つだけ面白い例をあげておく。

『中学教科書において必修とされていた二次方程式の解の公式を、作家である自分が「二次方程式を解かなくても生きてこられた」「二次方程式などは社会へ出て何の役にも立たないので、このようなものは追放すべきだ」と言った(この後、夫の三浦朱門(後の文化庁長官)が教育課程審議会で削除を主張し、現行中学課程で「二次方程式の解の公式」は必修の事項ではなくなった)。』(Wikipedia「曽野綾子」より)

他にもいろいろあるが、ここではこれくらいにしておく。しかし、この本がきっかけで、高校の歴史教科書から日本軍の強制記述が削除されたらしい。

一方、謝花さんの本は、教科書から削除されてしまうことに危惧を感じた集団自決の生き残りの方々が、重い口を開き、集団自決の様々な場面を謝花さんに語り、その証言を元に書かれたものである。読み進めるのがとても辛く、思わずうめき声をあげてしまうほどだ。まさに地獄絵図である。「米軍の捕虜になったら女は強姦され、男は戦車の下敷きになって殺されるから、その前に自決しなさい。」と手榴弾を手渡されていたと記されている。そして、手榴弾が不発で死ねなかった人々は、親が子を、子が親を、絞殺したり、こん棒で殴り殺したり、岩に叩きつけたり、剃刀で首を切ったり、火の中に投げん込んだりと、想像を絶するような場面がこと細かくこの本には書かれているのだ。

こんな大事なことが、教科書には一切記述されていないのが、今の日本の現実。もちろん、大事なのは沖縄戦だけではない。伝えていかなければならないことが、他にもまだまだあるけれど。