玉本英子さん講演会

ビデオジャーナリストの玉本英子さんの講演会を聞きにいってきた。
現在のイラクの状況を、玉本さんが撮影したビデオを見ながらのお話であった。

2007年4月の映像では、スンニ派の自爆攻撃で黒焦げになった車をバックに、「なんてことはないよ」と笑っている子供、そしてその近所の文房具屋さんにたむろする子供たちは、二日に一回しか学校に行けない、行っても先生がいないと、これも笑顔で答えていた。

2009年3月、バクダットにあるザハラ公園での映像。大阪の服部緑地のような場所で、家族連れがたくさん遊んでいる。その人たちにインタビューをすると、「こんな休日を迎えることができる日が訪れるなんて思いもしなかった。」と笑顔で答えていた。2年前に比べると、治安は良いが、空爆のあとがそのままである。そして検問の数が多いので、力で抑えつけての平和であるようだ。バクダットの状況が良くなったのは、2008年からの米軍とイラク軍による武装勢力掃討に因るものだ。

バクダットから北へ170kmにあるサダムフセインの生まれ故郷であるティクリートは、かつて反政府勢力の拠点であったため、今もフセインの肖像画が建物の壁などに残る町である。しかし、イスラム教は偶像崇拝を禁じているので、目のところだけが剥がされてあった。このティクリートも治安が良くなっている。それは、旧イラク軍の司令官を、現イラク軍に呼び戻し、そして検問を厳しくしたからだそうだ。

その町でケバブを売っている28歳のバシールさんにインタビューしていた。頭は禿げ上がり老け顔で50歳ぐらいに見えていたが・・・。彼曰く、「オバマがもしイラクのことを考えているのなら、米軍が殺したイラク人たちを保障すべきだ。それをしてから撤退せよ。このまま出て行ってはならない。」

しかし、その後米軍基地を取材しているが、ノーアポにも関わらず、司令部の中を撮影しても何らストップもかからず、もう完全な撤退モードになっていた。このまま撤退してもイラク軍は大丈夫かと言う質問を米兵にしても、上を見ればキリがないと答えられたとか。通訳に同じ質問をしたら、イラク軍は指揮系統がなっていなく、武器もなく戦闘機もない状態だと答えたそうだ。

イラクの治安がよくなった大きな要因として、民兵組織SOI(Sons of Iraq)があげられる。公務員並の給与で民兵を雇うプログラムだ。そのお金はもちろんアメリカから出ているのだが、その給与によって、お金のために武装勢力に加担していた民間人が激減したそうだ。SOIの民兵たちは、自分たちは米軍に利用されているのではない、イラクのために働いているんだという自覚はあるそうだが、アルカイダからはアメリカの傀儡だと狙われたり、またマリキ政権にとっても、その存在は障害になっているそうだ。

大阪の太平寺小学校とイラクのアルビルにあるジャワヘリ小学校との交流の架け橋も、玉本さんはされていて、お互いに自己紹介カードの交換をしている姿はとても微笑ましかった。平和教育は、戦争の悲惨さを伝えるだけでなく、そこに住んでいる一人一人の存在を認め合うことも大切なのではと言うようなことをおっしゃっておられた。

最後にエズディ教の話。イラクでイスラム教、キリスト教につぐ第三の宗教だ。ゾロアスター教とキリスト教とその他もろもろがミックスされた宗教で、多神教である。またエズディ教徒になるためには、父も母もエズディ教でないといけないと言うかなり特殊な宗教であるらしい。フセイン時代にかなり弾圧をされたが、今も無差別殺人が続いていて、悪く言えば、殺されっぱなしで、それは、エズディ教の人たちは報復はしないからだそうだ。それは教えとして報復をしないとあるわけでもなく、彼らの信条としてあるものらしい。

以上は、自分へのメモ、記録として残しておきたいのでまとめてみた。少し不思議に思ったのは、劣化ウラン弾の話が出てこなかったことだ。玉本さんは、そのことについては取材していないので、他の団体やジャーナリストに当たって欲しいとおっしゃっていたが、何回もイラクに取材していながら、そのことが目に入らないのは、もしかしたら、劣化ウラン弾の影響ってそんなにわかりにくいものなんだろうか、ということである。孤児院への取材もあったが、やはり劣化ウランの被害の話はなかった。地区にもよるものなのかな。もしかして従軍取材だから、そこは避けなければならなかったとか。

そう。「南京 引き裂かれた記憶」のインタビューワーの松岡環さんも会場に来られていた。松岡さんは、玉本さんがノーアポイントメントで取材することを称えていたが、玉本さんはアポイントメントをとって取材してまわると、武装勢力に待ち伏せされる可能性があるからだと答えておられたのを聞いて、なるほどと思った。

しかし、玉本さんは宇多田っぽく、結構美人だった。(笑)
(なんのしかしや~)

以上、おしまい。