沈黙

「形だけでいいのじゃ」と踏絵を迫る役人。それを拒み、ムシロで包まれて火に焼かれる信者。踏絵に従っても、十字架にツバを吐けと命じられ、そこまでは出来ずに、波打ち際で十字架に貼り付けられ、殺される信者。司教に棄教させるために、すでに改宗した信者をムシロに包んで海に放りなげたり、逆さ吊りにしたりして殺す為政者。

残酷なシーンも多々あるが、リアリティのある重厚な映像で、人物の描き方もステレオタイプではなく、特に塚田さんが秀逸だった。しかし特定の宗教に帰依していない自分にとっては、根底に流れるものに理解しがたいところがあったように思う。貧困や圧政からの心の救済としての宗教に踏みとどまらない恐怖を感じたからこそ為政者はそこまで迫害をしたのだろうけれど。

「形だけでいいのじゃ」とそこまで為政者は譲歩しているにも関わらず、信者はその形にまで拘る、そこが宗教に価値を置いていない僕には分からず、おそらく為政者と同じ恐怖を僕は味わっているのではないかと思う。何を思っているのか分からない恐さ。でも、逆に言えば、そこは為政者が立ち入ってはならない領域だ。卒業式で君が代を歌わない自由、日の丸に起立しない自由、それが冒されている今の時代にも通じるところがありやなしや。