消されたマッコリ。

「ほろよいブックス」シリーズの中の一冊なので食文化のウンチク本なのかなと思ったら大違い。戦前から戦中戦後にかけて日本に来ざるを得なかったコリアンの歴史と生活と戦いが描かれている。

舞台は大阪最南端の「多奈川」。そこで、コリアンたちの生活のための密造酒が作られる。当時は「多奈川一級酒」と呼ばれ、近畿一円に広まっていたらしい。今でもあるのなら飲んでみたいものだ。

そしてその摘発で、コリアンが一人射殺されている。「多奈川事件」と呼ばれているそうだ。新聞では、警察官3人で赴いたところ拳銃を奪われそうになったので、もみあっている最中に発砲したと報道されている。しかし、筆者は当時目撃した人を見つけ出し、警察の発表とかなり食い違っていることが、この本に書かれている。警官は一人だけで、拳銃を奪おうなどとしていなかったそうだ。その殺されたコリアンの娘さんは、老年になってから識字学級に通い、そこでその時の悔しさを作文にしている。「わたしが男だったら復讐していたのに」と。