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いつも思うけど、河瀬直美監督の映画って、なんであんなに役者さんたちが自然な演技になるんやろう。役者さんたちだけでなく、スクリーンの中にあるものがすべて自然で必然のように見える。車の音とか子どもたちの嬌声とか風の音とか犬の鳴き声とか、セリフと重なっているのに邪魔にならない。カメラワークも人の目のように優しい。なのでいつもきっちりフレームの中に入っているとは限らない。カメラが追いつけないシーンもあったりする。だからこそ、観客も違和感なく映画の中に入っていけるのだろうか。纐纈あやさんの映画と共通する。

そして樹木希林さんは樹木希林ではなく徳江さんなんだ。あずきを蒸している蓋の上に頬を寄せるシーンにふいに涙が出てきた。徳江の姿があまりにも美しすぎて。徳江の透明感がたまらない。

差別から徳江を守れなかった千太郎(永瀬正敏)が、徳江の作った餡を食べながら涙を流すシーンも、同じように涙がポロポロでてきた。

泣けるから良い映画だと言っているのではない。なんていうか心をとても揺さぶられるし、たぶん何度観ても、その度に新しい発見がありそうな映画だと思う。